一般的に、日本から派遣される海外駐在員の多くは、一度派遣されるとだいたい3年から5年くらいの期間で派遣され、会社の方針や国の滞在規定によって5年を超えるケースもある。1回目の海外赴任では、2年すれば現地人との人間関係も構築して、本社・現地から求められるレベルの成果を出せるようになり、「さあこれから大きな成果を出すぞ!」と手応えを感じていた矢先に帰国を余儀無くされることも多くあります。3年を超えれば、現地でさらに昇格ししたり職務も重くなり現地からの信頼も大きくなって、5年経てば多くの場合は現地人からも惜しまれての帰国となります。

会社にとっても、一度派遣した海外駐在員にはできるだけ3-5年はなんとか赴任・活躍してもらいたいものです。もし短期での帰国となると、投資回収の観点でペイしないし、また何より短期帰国となると、人事配属周りがバタバタしてその影響が日本だけでなく玉突き人事がグローバルに波及しますので、できるだけ穏便にやりたいのではないでしょうか。

現地人社員にとっても、長らく人間関係を築いてきた日本人駐在員の移動が発生すると、また新しく人間関係を築いて、現地事情を一から理解してもらってと、無形のスイッチコストがかかるものです。私も現地人の「また日本人、変わるの?会社のことだからなんともいう立場にないけど、、、」という不満ともなんとも言い難い声もよく聞いたものです。各国現地の人材は、同じ国、同じ役割で長らく仕事をしているので、どんどんそのポジションに必要なスキルアップを深掘りしていきますが、一方、駐在員側はどうしても入れ替わるたびにスキルダウンします。改めて、異文化理解、組織事情、人間関係を一から構築しなければなりません。グローバル化が進んだ組織では、特にその傾向が顕著になります。新しく赴任する駐在員は、そんな現地事情も頭の片隅に置いておいた方がよいかもしれません。

このように、どのステークホルダーも海外駐在員が途中帰国やトラブルなく赴任ミッションを完遂して成功することを期待しています。それでは、そんな期待のかかっている海外駐在員の成功の鍵ってなんでしょうか?

私が海外駐在マネジメント向けのコーチングでよく言うのは、「タイトル度外視でオープンな心で現地人と接する、そして、彼らと一緒に現地の発展に貢献するという”在り方”が大事、そして、長い駐在期間中ずっとそうあり続けるとコミットすること」、です。そして、その在り方が最終的に現地組織のパフォーマンスを上げ、本社の期待する売上・利益となって還元される、というこの成功の順序の理解が重要です。たとえ、現地社長として赴任したとしても同じことで、上司に面と向かって反発しない。アジアでよく見るのは、現地人部下の面従腹背の状況です。最悪な場合、その状況に社長が気づいていない。

海外駐在員はよく本社とローカルの方針の間に挟まれます。人によっては、駐在中の悩みランキング1位はこれかもしれません。その悩みは「覚悟」が決まっていないからではないかと私は考えています。「ここでそのやり方は通用しないって」という考えを、本社とまっすぐ話しあう。そのやり方で出た結果は自分で責任とる。とはいえ、駐在員の本心としては現地事情もわからず現地人から聞いた話を信用するしかなく、心細いものです。その時に、現地人が自分に着いてきてくれていることが、どれだけ心強いか。そして、現地人が自分についてきてくれていると言う状況を作るには、冒頭の「ポジション度外視で、現地人と一緒に現地の発展に貢献する」という”あり方”が大事になります。最終的には、『現地で一緒に仕事をする現地人とその国に対してリスペクトがどれだけあるか、つまりどれだけ愛があるか』、もうこれに尽きるのではないでしょうか。

現地人は本人が思っているより、駐在員をよくよく見ています。イメージしてみてください。仮に、自分がアメリカ系の日本法人に勤めていて、アメリカ人が任期3年で駐在してきて、日本の事情も知らずに本社の方針ばかり展開して、日本社員との接触も少なく、現地の簡単な挨拶言葉も一切使わず、敬意もなく仕事をして、経費を多く使って、コミュニティではアメリカ人と固まって、夜は六本木で遊んでいる。どういう感情が起きますか?結果を出せば、どんな在り方でも良いのでしょうか?

まずは、そんな事態が自社の海外駐在員で起きていないか、一度、アセスメントして見ても良いと思います。

海外赴任者の成功を心から祈っています!!

PEAK STATE!!
LIFE SHIFT JAPAN株式会社
玉本潤一