「ビジョンが作れない」、そんな自分は経営者として才能がないのか、と一人でクライアントの社長は悩んでいました。
ビジョンは航海でいうところの目的地ですが、それが全くイメージ湧かない。
会社がどんな船(バリュー)かすら、書けない。
ただただ長らく、求められているもの、つまりミッション(使命、命の使い道、航海でいうところの方位磁針)に従って、不確かな中で事業を進めることに不安を感じていました。
さらに、最近の世の中の風潮は、
「ワクワクするものに従うこと」
「やりたいことをやろう」
「セルフイメージは高く」
「10年後のビジョンを大きく描こう」、という考え方が流行っています。
自分も場面場面で、そういった脳科学をベースにしたコーチングをしていますが、自分に蓋をしていた方々、立ち行かない状態の方にとっては、このような欲求に引っ掛けたコーチングが適切です。
人生や事業にエネルギーをもたらします。
ですが、やりたい、やりたくない、で人生や事業を選択していない方々も沢山います。
いわれずとも、大きな叡智に身を委ねています。
こういった社長は、「窮地に際して、助け舟が目の前に現れた。
もし、会社が必要なければ、会社は潰れるしかない。」とナチュラルに腹をくくっています。
執着もないので、いつでも手放せる状態にある。
「いやー、でも不安はいつもありますよ」と笑っている。
どうにも彼女から不安を感じない。
もちろん、従業員をかかえているので全く投げやりではない。
業界はコロナで縮小している業界で、業態転換を求められている。
世間からすると、「そんな状況で、よく笑ってられるね」という理解できない佇まいです。
クライアントではありますが、このあり方を自分自身が参考にさせていただいています。
「〇〇さんのそのあり方、多くの方が欲しているやつですよ」、とお伝えしています。
自分がおかしいとずっと思っていたこの社長にとっては、積年のつっかえごとが取れ、安堵の気持ちの様子です。
世界の中で100年続く企業の半分は日本企業です。
つまり、1924年以前に設立している戦前の企業は、実はこのマインドで事業を展開しています。
事業を神事と捉えています。
神(天、宇宙、something great、なんと言ってもよい、天地万物をお創りになった創造主のこと)からの啓示に従って事業を展開しています。
自分のための私事でも、人々のための公事でもなく、神事(かみごと)としての經營です。
神様に事業で奉仕しています。
このクライアントは、周囲の最近のビジョン実現型や欲求実現型のアドバイスに悩まされていました。
このクライアントのように使命として事業を引き継いで経営している人は、今の風潮に違和感があるのではないでしょうか。
2代目、3代目社長は特にそうなのではないかと思います。
安直なビジョン型のアドバイスは、このような使命型の社長には惑わしになりかねない。
ビジョン型がフィットする社長にはビジョン型、使命型は使命型で。
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